前回の続き。辛い副作用ナンバー2は指先の痺れと書いた。
では辛い副作用ナンバー1は何かというと、私の場合落ち着かないことだった。
痛い訳じゃない。目に見える何かがある訳じゃない。ただ、身の置き所がなくて、座っていても横たわっていても落ち着かない、何も出来ないけどじっとしても居られない。
まるで世の中に自分が存在していい場所などないかのように、何をしていてもしっくり来ない。そわそわと身体の位置を変えたり貧乏揺すりをしたり。
こんな状態ではまともにものを考えることすら出来ない。仕事も家事も出来ない。もうずっとワイパックスを飲んで眠っていたかった。
ただ、痺れと違ってこちらは安息のひとときがあった。何故か湯船に浸かっている間だけは、得体の知れない身の置き所のなさから解放された。
お湯の中に身を沈めると、ぶれまくった自分の輪郭がすうっと一本に集約され、自分を取り戻せたような感じになる。
だから、この頃はお風呂が殆ど唯一の楽しみだった。
先生によると、この落ちつかなさという症状を訴える人はいるが、一般的ではない。抗がん剤の副作用ではなく、向精神薬の副作用アカシジアではないか、という。
制吐剤として処方されているノバミンは、本来向精神薬のドパミン拮抗薬で、その作用からアカシジアを生じることがあるらしい。
対策はやめるか薬を変更するしかないようだ。
がん患者の場合不安感が前面に出ることが多いそうだが、私の場合は不安感はなかった。
アカシジア対策にはワイパックスも使われるので、ワイパックスを飲んで寝てしまうというのはまぁ悪い方法ではなかったのかも。
落ちつかなさの正体がアカシジアだとしよう。アカシジアがノバミンのせいだったとしよう。じゃあ、ノバミンの服用を中止すべきか?
やめたらこれまでせっかく押さえ込んできた吐き気が出るかも知れない。
吐き気と落ちつかなさ、どちらなら我慢出来る? どっちも御免被りたい。
考えた末、これまで予防的に1日3回、きっちり飲み続けてきたノバミンの回数を少し減らすことにした。
ここまで吐き気がむかつき程度に抑えられていることで、時々飲み忘れることもあったが、それでも強い吐き気に襲われることはなかった。ノバミンを減らしつつキープして、吐き気も落ちつかなさもどっちもやり過ごそうという作戦だ。